研究概要 |
金沢医科大学耳鼻咽喉科嗅覚外来を受診した嗅覚障害患者のうち、本研究への参加同意を得られた18名(原因疾患:頭部外傷,感冒または慢性副鼻腔炎)を対象に基準嗅力検査により嗅覚障害レベルを測定した後に、SPECT-CTとMRIを用いた^<201>Tlオルファクトシンチグラフィの画像診断としての有用性と嗅覚障害患者における^<201>Tl経鼻投与の安全性の検討を行った。嗅神経への^<201>Tl集積は全例で健常者と比較し低下を認めた。また鼻腔の嗅上皮への^<201>Tl集積の低下を伴う症例も認めた。さらにMRI画像から推定された嗅球体積と^<201>Tl鼻腔嗅球移行度との相関を、健常者と嗅覚障害者を併せて検討したところ有意な相関を得た。以上から末梢嗅神経の連続性と嗅球形成との関連が明らかとなった。被験者において特に有害事象は認めなかった。 上記の臨床試験と並行して抗がん剤による嗅覚障害例における、^<201>Tlオルファクトシンチグラフィの応用の可能性を明らかにする目的で、抗がん剤パクリタキセルを投与した嗅上皮障害マウスを対象とした基礎実験を施行した。パクリタキセル投与マウスでは^<201>Tl経鼻投与後の嗅球と鼻腔上皮への^<201>Tl集積が、コントロールマウスと比較し有意に低下することが明らかとなった。 まとめ:^<201>Tl経鼻投与によるオルファクトシンチグラフィの嗅覚障害者における安全性が明らかとなったほか、嗅球形成と末梢嗅神経の連続性との関連が明らかとなった。また動物実験の結果から抗がん剤パクリタキセルによる嗅覚障害例への応用の可能性も示された。
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