研究課題/領域番号 |
21592174
|
研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
志賀 英明 金沢医科大学, 医学部, 講師 (80436823)
|
研究分担者 |
三輪 高喜 金沢医科大学, 医学部, 教授 (20229909)
中西 清香 金沢大学, 附属病院, 助教 (40532180)
|
キーワード | 嗅覚検査 / 分子イメージング / タリウム |
研究概要 |
金沢医科大学耳鼻咽喉科嗅覚外来を受診した嗅覚障害患者のうち、本研究への参加同意を得られた14名(原因疾患:頭部外傷,感冒または慢性副鼻腔炎)を対象に基準嗅力検査により嗅覚障害レベルを測定した後に、SPECT-CTとMRIを用いた^<201>Tlオルファクトシンチグラフィの画像診断としての有用性と嗅覚障害患者における^<201>Tl経鼻投与の安全性の検討を行った。主な結果としては鼻腔の嗅上皮への^<201>Tl集積の低下とともに嗅球への^<201>Tl遊走度が顕著に健常者と比較し低下を認めた。 平成21年度から平成23年度までに嗅覚健常者と合わせ41名の被験者を対象に^<201>Tlオルファクトシンチグラフィを施行したが有害事象は認めなかった。これまでの検討からは嗅覚障害患者の多くが末梢嗅神経傷害を有していることが明らかとなった。基準嗅力検査による嗅覚機能と嗅球への^<201>Tl遊走度との関連は嗅覚障害者と健常者を合わせた検討では有意な相関を認めた。しかし嗅覚障害患者のみでの検討では基準嗅力検査結果が末梢嗅神経傷害の度合いを必ずしも反映しているとは言えず、嗅覚障害の原因疾患毎の異なる病態に由来していると考えられた。 またマウスを使用した動物実験において、I-131標識IGF-I(Insulin-like growth factor)をマウス鼻腔に投与し嗅球、大脳組織ならびに三叉神経におけるIGF-Iの取り込み量を検討した。IGF-I投与用量を増加させると嗅球、大脳組織へのIGF-I取り込み量の増加を認めたが、三叉神経における変化は認めなかった。以上から経鼻腔的投与によるIGF-Iの脳内輸送においては嗅神経の寄与する割合が高いことが明らかとなった。IGF-Iなどの神経成長因子の脳内薬物輸送の臨床応用を展望する上で、末梢嗅神経の画像評価の重要性が今後増すことが期待される。以上の実験結果から末梢嗅神経を可視化できる^<201>Tlオルファクトシンチグラフィの臨床における応用範囲の拡大につながると予想される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
オルファクトシンチグラフィの嗅覚検査として意義付けのほか、脳内薬物輸送の評価法としての応用の可能性を示すことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
嗅覚障害の原因疾患毎の症例数がまだ十分ではないので、今後も症例数を重ねて臨床試験を進めていく。また同一症例における治療前後での比較も行い、嗅神経再生の画像評価の可能性を明らかとしていく。
|