研究概要 |
金沢医科大学耳鼻咽喉科嗅覚外来を受診した嗅覚障害患者のうち、本研究への参加同意を得られた9 名(原因疾患:頭部外傷, 感冒または慢性副鼻腔炎)を対象に基準嗅力検査により嗅覚障害レベルを測定した後に、SPECT-CTとMRIを用いた201Tlオルファクトシンチグラフィの画像診断としての有用性と嗅覚障害患者における201Tl経鼻投与の安全性の検討を行った。主な結果としては前年度までに得られた結果同様、鼻腔の嗅上皮への201Tl集積の低下とともに嗅球への201Tl移行度が顕著に健常者と比較し低下を認めた。平成21年度から平成24年度までに嗅覚健常者と合わせ50名の被験者を対象に201Tlオルファクトシンチグラフィを施行したが有害事象は認めなかった。被験者それぞれのMRI画像より得られた嗅球体積の推定値と嗅球への201Tl移行度との相関の有無を、被験者全体で検討したところ有意な相関が得られた。また健常者と比較し嗅覚障害患者における嗅球体積の推定値は、他施設の報告と同様に著明に低下していることが明らかとなった。以上の結果から、嗅覚障害患者一般における末梢嗅神経の連続性の減少と嗅球体積低下との関連が示唆された。 またマウスを使用した動物実験において、I-125標識IGF-I (Insulin-like growth factor-I)をマウス鼻腔に投与し大脳組織におけるIGF-Iの取り込み量を検討した。片側嗅球を除去したマウスではコントロールマウスと比較し大脳におけるI-125標識IGF-Iの取り込み量の著明な低下が明らかとなった。201Tlに加えて放射性アイソトープを標識したIGF-Iの新たな嗅神経トレーサーへの応用の可能性が明らかとなった。
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