研究概要 |
この1年間で、以下の研究を行った。 1.G-CSFは嗅上皮に対する保護作用を有するのか? この可能性を検討するために、最初にG-CSFが嗅上皮に直接作用するバックグラウンドがあるのかを検討した。G-CSFレセプターによる免疫染色を行い、嗅上皮での分布を調べた。副鼻腔粘膜に陽性細胞が認められたが、嗅上皮には観察されなかった。このため、G-CSFは直接嗅細胞には作用しないと考えられた。 2.G-CSFは,骨髄細胞を介して嗅細胞再生を促進させるのか? 骨髄移植されたレシピエントマウスをG-CSF投与群と非投与群(コントロール)に分類し、G-CSFがドナー骨髄由来細胞のレシピエントマウス嗅上皮への取り込みを増加させるか否かを検討した。ドナーにGFPマウスを、レシピエントマウスに放射線照射して免疫寛容にしたC57BL/6マウスを使用して、レシピエントマウスの嗅上皮でドナーマーカー(GFP)を確認し、嗅細胞の特異的マーカーであるolfactory marker protein(OMP)との2重免疫染色を行い、ドナー骨髄由来細胞が嗅細胞に分化していることを確認した。次に,メチマゾールの投与を行い、嗅上皮傷害時に骨髄由来細胞の取り込みがG-CSF投与群と非投与群(コントロール)で差異があるのかを統計学的に解析した。G-CSF投与によって骨髄由来細胞の嗅上皮への取り込みが統計学的に有意に増加していた。以上より、G-CSFは骨髄細胞を介して嗅細胞再生を促進すると考えられた。なお、この研究の内容はRhinologyに投稿して受理されin press中である。
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