研究課題
近年、新しい治療手段としてRNA干渉が注目されている。RNA干渉はsiRNA(small interfering RNA,short interfering RNA)という21-23bp塩基対の短い合成二本鎖RNAによって惹起されるが、この現象を利用することで特定の遺伝子の発現を抑制することが可能となる。私たちはsiRNAの性質上アレルギー疾患の治療に応用できるのではないかと考え、アレルギー疾患に対するsiRNAの有用性について研究してきた。その結果、CD40 siRNA発現ベクター(CD40 shRNA)の直接投与がアレルギー反応や症状を抑制することを証明した。しかし、CD40 shRNAの直接投与は抗原非特異的免疫療法である。また、CD40 shRNAを直接体内に投与することは予期せぬ副作用を引き起こす危険性がある。従って、shRNA、siRNAを直接投与しない抗原特異的免疫療法の開発が必要である。平成21年度は、CD40 siRNAを導入、OVA(Ovalbumin)抗原を感作した樹状細胞(CD40 silenced OVA DC)のワクチンとしての有用性を検討した。その結果、CD40 silenced OVA DCのアレルギー感作前投与が抗原特異的にアレルギー反応を抑制することを証明した。平成22年度はCD40 silenced OVA DCの治療薬としての有効性を調べるために、アレルギー感作後のマウスにCD40 silenced OVA DCを投与してその効果を検討した。その結果、CD40 silenced OVA DCはアレルギー感作後においても有意にくしゃみや鼻掻きの回数、OVA抗原特異的IgE抗体価を抑制した。すなわち、CD40 silenced OVA DCが治療薬として有用であることが証明された。
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J Allergy Clin Immunol
巻: 125 ページ: 737-743