研究概要 |
鼻アレルギーの症状発現には鼻粘膜知覚神経の関与が重要であることが知られている。本研究では、鼻アレルギー(AR)における神経反発因子Sema3AのARへの関与の有無とその治療効果の検討を目的とする。 アレルギー鼻炎(+)10例、アレルギー(-)10例の下甲介粘膜を採取し、パラフィン切片ブロック、凍結切片用ブロック、またWestern Block,RT-PCR用凍結粘膜を用いた。 神経反発因子Sema3AとSema3Aのレセプターのneuropilin-1が血管新生を促進するVEGF(vasucular endothelial growth factor)のレセプターでもあるため、Sema3AがVEGFに対し拮抗作用を持つことから、Semaphorin3A、neurophirin-1、VEGFR-1,2の発現を免疫組織染色にて同定した。Sema3A、neurophirin-1の発現は、それぞれ上皮細胞間領域、腺細胞間領域に認め、VEGFR-1,2の発現は主に腺細胞に認めた。アレルギー(+)群と(-)群とでの発現量の比較をおこなったが、現在Sema3Aは、アレルギー群に多く発現している傾向を認めたが統計学的有意差は認めなかった。 次にメッセンジャーレベルでの解析を上記検体、分子を用いてRTPCR法にて解析した。遺伝子レベルにてもそれぞれの分子にてアレルギー(+)群と(-)群とでの発現量の比較をおこなったが、統計学的有意差は認めなかった。また、アレルギー(+)群の中でSema3Aとそのレセプターであるneurophirin-1、VEGFR-1,2との発現量の相関性を解析したが統計学的有意な相関はなかった。 マウスにおける同様の研究が、昨年他施設より施行され発表され、アトピー性皮膚炎と同様の結果でありアレルギー性鼻炎モデルマウスにて有意に神経反発因子Sema3Aの発現量の低下を認めた結果であった。 しかし、我々のヒト鼻粘膜を用いた研究では両者に有意差はなかった。アレルギー(-)群となった検体もアレルギー以外の炎症があることが示唆され、ヒト鼻粘膜を用いた研究にてSema3Aがアレルギー炎症のみならず鼻粘膜過敏症における神経の役割に関与していることが示唆される。神経反発因子であるSema3Aがヒト鼻粘膜にてアレルギー炎症に特異的に関与する分子ではなく、慢性炎症における神経の役割に関与するものと示唆される。 そこで本年度は各検体の免疫染色における神経の上皮内への分布量とSema3Aのメッセンジャーレベル、タンパクレベルでの発現量の相関関係を解析した。
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