研究概要 |
線維芽細胞は、部位により役割が異なっていることが分かってきている。同じ呼吸器である鼻・副鼻腔や肺を比較しても役割に違いが存在することが明らかになりつつある。鼻副鼻腔線維芽細胞は、種々のTLR ligandsに反応しケモカインやサイトカインを産生する。またTGF-βで刺激しても線維化へと誘導しない、などの特徴がある。一方、肺線維芽細胞は、LPS,poly(I:C)を除いたTLR ligandsにはほとんど反応せず、またTGF-βに反応して活性化され線維芽細胞に変換され、線維化へ誘導する。これら特徴にはmicroRNAの制御が働いているとかんがえられる。 1958年に提唱された分子生物学の中心原理では、一つの遺伝子から一つのmRNAが転写され、一つのたんぱく質ができるというものであった。しかし近年のnon-coding RNA(ncRNA)(small interfering RNAやmicroRNAなどからなる)の発見により、ゲノムの領域を大きな遺伝子領域が覆い一つの遺伝子から多数のRNAが転写され、そのRNAのうち約半分はncRNAとしてRNA大陸を形成していることが明らかになった。これらのncRNAは機能性RNAとして遺伝子に働き、種々の細胞の分化や増殖、サイトカイン・ケモカイン産生を始めとする自然免疫や獲得免疫応答を制御していると考えられている。 気道線維芽細胞として、健常鼻粘膜、慢性炎症を伴っている鼻粘膜線維芽細胞として鼻茸、健常肺、慢性炎症を伴っている肺線維芽細胞として肺線維症肺、を用い線維芽細胞を単離し、それぞれの部位により発現するmicroRNA、炎症の有無によるmicroRNAの発現の違いを検討している。特に鼻副鼻腔の線維芽細胞に発現するmicroRNAの検討を行っている。
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