研究概要 |
鼻腔、喉頭癌におけるHPVの関与およびその発癌機構を明らかとするため、本年度はまず過去の治療症例におけるパラフィン切片からin situ hybridazation法によるHPVの同定、およびHPV関連発癌において過剰発現することが知られているp16の発現を免疫染色法にて確認する方法を確立した。ISH法によりvirusのtype別のprobeを使用することによりvirusのtypingも同時に可能となった(probeはtype6,11,16,18,33,35と乳頭腫や発癌に関与している大部分のtypeを網羅している)。当初の研究計画にあったパラフィンブロックからのDNA抽出によるPCR法によるHPVの同定については現在のところDNA抽出の過程での手技が確立できていないが、新鮮例などDNAが抽出できる検体に関してはPCR法によってvirus DNAの同定およびtypingが可能になった。この方法においては理論的には擦過によって得られる程度の細胞からもDNAの検出が可能であり、放射線化学療法などを行い手術検体として十分な組織量が得られない症例についても披見者の負担なく検査が可能となっており、現在新鮮例についてもこの方法により検出を行い症例を蓄積し臨床成績との関連を検討している段階である。また正常の鼻腔や扁桃などからも検体採取が可能となったため、HPVの健常人における罹患率やHPV関連発癌症例の病変以外の部位におけるHPVの同定や感染率などを調査することが可能となり、HPVの感染の疫学的調査、発癌の頻度や感染から発癌にいたるまでのrisk factorといった重要な問題が明らかにできると考えられる。本年度はこれらにつきさらに症例数を蓄積し結果の解析を行う予定である。
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