研究概要 |
本研究は、がんワクチン・CHP-MAGE-A4臨床研究においてワクチン投与を受けた頭頸部腫瘍などの例の末梢血と腫瘍組織(組織浸潤リンパ球)のMAGE-A4抗原免疫モニタリングを行い、末梢血、組織侵潤リンパ球でのMAGE-A4以外の発現抗原(NY-ESO-1,SAGE)の抗原発現を観察して、抗原拡大現象(Antigen-spreading)を解析し、抑制的免疫反応解析(FOXp3、PD1など)と、末梢血、腫瘍組織での抗原特異的免疫応答動態評価を行い、新しいワクチン療法開発の基盤データとするものである。 本年度の実績は、新規抗原デリバリーシステムである疎水化多糖類プルランと癌抗原MAGE-A4組換え蛋白の複合体をワクチンとするがんワクチン臨床試験「MAGE-A4抗原を発現する難治性悪性腫瘍に対するCHP-MAGE-A4がんワクチン臨床研究」を実施した。 これまで、頭頸部腫瘍を含む12例に対してワクチン投与を行い、5例において6回以上の反復投与を完了し、ワクチンの安全性の評価が可能であった。これら研究被験者より免疫モニタリング検体を採取し、リンパ球、血清の保存を行った。 MAGE-A4抗体価測定系でのELISA評価については、測定の信頼性を確認するために、陽性、陰性コントロールを使用した測定を実施し、カット・オフ値を設定した。これを用いたMAGE-A4蛋白に対するIgG抗体反応について7例で解析を行った。ワクチン前の抗体陽性は3例にみられ、自然免疫反応がみられることが判明した。その内、ワクチン投与に伴い反応が増強するものが1例、陰性例4例では2例が陽性化した。これらより、本ワクチンはMAGE-A4抗原特異的免疫反応が約半数に誘導されることが判明した。さらに、MAGE-A4以外にNY-ESO-1抗原に対する抗体値が上昇する例をみられ、腫瘍破壊に伴うと考えられる抗原拡大現象が存在することが観察された。
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