本研究は平成21-23年度の各年度において化学放射線同時併用療法で加療する頭頸部進行癌の未治療新鮮例について、p53コドン72遺伝子多型、p53遺伝子変異、高リスク型ヒトパピローマウイルスの感染、FDG-PETについて解析し、これらの因子やTNM分類などの臨床的因子と局所制御率、生存率との相関についての検討することを目指すものである。p53コドン72遺伝子多型については末梢血のリンパ球から正常DNAを抽出してゲノムを解析するものである。一方、p53遺伝子変異、高リスク型ヒトパピローマウイルスについては原発巣の生検標本から腫瘍DNAを抽出して解析するものであり、また、FDG-PETは治療開始前および終了後10週目に施行し、腫瘍の生物学的活性を評価するものである。化学放射線同時併用療法後の再発はほぼ全例が治療後3年以内に発生するため、局所制御率、生存率については生存例の観察期間の中央値が3年に達した時点で検討を行う。従って、解析する各種の因子と局所制御率、生存率との相関についての検討は研究期間終了後に行うことになるが、現時点における中間解析では、高リスク型ヒトパピローマウイルスは中咽頭癌において有意に高頻度に検出され、高リスク型ヒトパピローマウイルス陽性例は陰性例と比較して有意に予後良好であった。また、治療前のFDG-PETによる生物学的活性の程度は下咽頭癌では予後との相関を認めたが、中咽頭癌では予後との相関を認めなかった。これは中咽頭癌では、予後良好な高リスク型ヒトパピローマウイルス陽性例が約半数を占めるためと考えられた。
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