CDDP 20mg/m^2+DOC10mg/m^2を週1回計6回投与し、同時に通常分割照射66Gyを施行する化学放射線同時併用療法を施行した切除可能な頭頸部進行癌を対象として、PETで評価する生物学的活性因子、p53遺伝子変異、p53コドン72遺伝子多型、ヒトパピローマウイルス感染が予後因子となるか否か前向きに検討した。 PETで評価する生物学的活性因子として、SUVmax、SUVmean、metabolic tumor volume (MTV)のについてROC解析により検討したところ、一次治療効果と最も有意に相関するのはMTVであった。しかし、多変量解析では有意な因子は認めなかった。そこで、病因的に異なる上咽頭癌(EBウイルスにより発生)、中咽頭癌(約半数はヒトパピローマウイルスにより発生)、喉頭・下咽頭癌(喫煙・飲酒により発生)の3群に分けて解析したところ、上咽頭・中咽頭癌では同様の結果であったが、喉頭・下咽頭癌では多変量解析の結果、MTVが極めて有用な予測因子であることが判明した。MTVを算出するSUVの閾値を2.5から漸増して検討したところ、SUV=4.5以上の設定では感度・特異度はプラトーとなり、実にcomplete responseの的中度は97%、partial response以下の的中度は100%と極めて良好であった。MTVの高低で階層化し検討したところ、MTV低値群では粗生存率および喉頭温存生存率はMTV高値群に比べ極めて良好であった。また、MTV高値群における死因は局所制御不能によるものであった。 p53遺伝子変異は全体の約半数に認め、その一方でヒトパピローマウイルス感染は中咽頭癌に特異的であった。ヒトパピローマウイルス感染とp53遺伝子変異、特にdisruptive mutationには有意な負の相関を認めた。p53遺伝子変異、p53コドン72遺伝子多型、ヒトパピローマウイルス感染と臨床因子について多変量解析を行ったところ、有意な予後因子は認めなかった。 以上の結果を受け、切除可能な喉頭・下咽頭進行癌を対象に、MTV低値群に対しては化学放射線同時併用療法を、MTV高値群に対しては喉頭全摘を含む根治手術±術後照射を行う個別化治療を計画している。
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