研究概要 |
1.頭頸部癌培養細胞株からの癌幹細胞集団の分離 マトリゲル培養によりsphereを形成する能力を持つ細胞分画は、培養癌細胞の中でもcancer stem cell (CSC)様の形質と上皮間葉系転換(EMT)の両者の性格を帯びた細胞集団と考えられる。頭頸部癌においては、従来のFACSを用いた表面抗原による細胞分画の分離法の信頼性が疑問視されるなか、細胞の表現型を重視した方法でCSC様細胞集団の分離法を確立することは意義が高いと考えられる。SCC9、MDATu-138、YCU-H891,FaDu、Ca127の5種類の頭頸部癌細胞を用いて、マトリゲル上でsphereを形成する細胞分画の分離に成功した。これらの細胞は親株に比べて高い浸潤能を示し、CSC、EMRの表現型を持つ細胞であることが確認された。これらの細胞ではOct、Nanog、Bmi1、CD44などのCSCマーカー及ぶtwist、Snail、VimentinなどのEMT関連分子の発現量の亢進が認められた。また、当初の目的であるStat3の転写活性の亢進も認められた。これらの分子を抑制することによる表現型の変化を解析中である。 2.低分子量のStat3特異的抑制剤のスクリーニング 共同研究者である岐阜薬科大学酒々井教授とともにin silico system上で2種類の低分子量Stat3抑制剤の候補物質を見いだした。これらの薬物は頭頸部癌細胞に対して強い殺細胞効果を示すが、この濃度におけるStat3活性の抑制効果は明らかでなく、何らかの他のメカニズムが働いていることが示唆される。このメカニズムの解明とともに、さらに低分子量のStat3特異的抑制剤のスクリーニングを継続している。
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