循環動態が特殊臓性知覚系器官に及ぼす影響を形態学的に捉えることを目的として、高血圧自然発症ラット(SHR)の動脈系化学受容器である頸動脈小体の形態とそこに分布する神経ペプチドを観察した。SHRの頸動脈小体はコントロールであるWKYの頸動脈小体に比較して、長径で1.3倍に肥大した。しかし著しい血管拡張は認められず、頸動脈小体内の結合組織性基質の増大が著明であった。化学受容細胞はその形態にも数にも変化はなかった。ペプチド性神経支配に着目すると、血管拡張作用を有するvasoactive intestinal polypeptide (VIP)が著明に減少した。また血管収縮作用を有するneuropeptide Yはわずかに減少した。その他体性知覚系神経ペプチドであるsubstance Pやcalcitonin gene-related peptideはWKYと比較して顕著な相違はなかった。 今回の研究では神経ペプチドがSHRの頸動脈小体の肥大に関与することは否定され、そのメカニズムは不明である。VIPの低濃度血管内投与が頸動脈小体の化学受容に対して神経活動を低下させるという報告を考慮すると、SHRの頸動脈小体内のVIP線維の減少は神経活動の低下を抑制することとなり、その結果として頸動脈小体の化学受容の感受性を高めていることが示唆された。 現在、神経ペプチド含有線維と化学受容細胞の立体的な形態的関連を解明するために、3次元構築を試みている。
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