研究概要 |
平成22年度に行った実験では、Snailの発現によって、それまで浸潤能を有していなかった癌細胞にMT1-MMPとMT2-MMPの発現が誘導され、癌細胞の浸潤、増殖および血管新生が引き起こされることが確認された。また、MT-MMPsをRNAiでknock-downすることでSnailによる癌細胞の浸潤、転移、および血管新生を抑制することができたことから、Snailにより誘導されたMT1-MMPとMT2-MMPが協調的にはたらき、癌細胞の浸潤、転移に直接的に関与していることも確認された。そこで平成22年度では、これらの現象がin vitroだけでなくin vivoでも同様の現象が認められるかについて鶏卵によるがん浸潤・転移モデルを用いて検討した。鶏卵を用いたモデルはchick chorioallantoic membrane assay (CAM assay)と呼び、11日齢の有鶏卵漿尿膜(chorioallantoic membrane, CAM)の上に対象とする細胞を接種し3日間培養する方法を用いた。細胞の観察にはGFP fluorescence発現ベクターを用いた。結果は、Snailの発現していないコントロール細胞(MCF-7/control)はCAMの基底膜上で浸潤せず留まっているのに対して、Snailを強発現させた細胞(NCF-7/Snail)は基底膜を破壊し、CAM組織内に浸潤することが確認された。つまり、Snailが細胞間接着分子E-カドヘリンの発現抑制を引き起こすことで上皮-間葉移行(Epithelial-Mesenchymal Transition, EMT)を誘発することが示唆された。
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