研究課題/領域番号 |
21592205
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
戸川 彰久 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (70305762)
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研究分担者 |
藤原 啓次 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (20244725)
島田 純 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (90326372)
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キーワード | インフルエンザ菌 / 溶連菌 / 細胞内侵入 / 急性副鼻腔炎 / 急性中耳炎 |
研究概要 |
近年、ペニシリン系抗菌薬あるいはセフェム系抗菌薬などの経口抗菌薬の投与にも関わらず、急性扁桃炎の臨床症状が十分に改善しない症例や再発・再燃を繰り返す症例も増加している。 急性扁桃炎の難治化、反復感染の原因としては1)細菌の産生するβラクタマーゼによるβラクタム剤の活性低下、2)服薬コンプライアンスの低下、3)家庭内感染により同一菌株の再感染がおこる、4)細菌の増殖がプラトーに達すると菌体表面のペニシリン結合蛋白が減少するイーグル現象のためペニシリン系抗菌薬によって完全に除菌できず、抗菌薬を中止すると再増殖を起こしてくる、5)細菌のバイオフィルム形成などとともに起炎菌が宿主上皮細胞内に侵入し、抗菌薬が細胞に到達できず除菌されないことが注目されている。 242例(急性扁桃炎170例、急性鼻・副鼻腔炎51例、急性中耳炎21例)の非侵襲性溶連菌感染症患者より分離された溶連菌242株および侵襲性溶連菌感染症患者より分離された17株を用い、細胞内侵入に関与すると考えられているspeA、speB、speC、speF、speG、speH、speJ、ssa、smeZ遺伝子の検討を行った。 242株の非侵襲性感染症分離株では、12.0%にsil遺伝子が検出された。すべてのsil遺伝子陽性株では、speB遺伝子陽性であり、69.0%でspeC遺伝子陽性であった。一方、17.7%の侵襲性感染症分離株でsil遺伝子陽性であった。76.5%のsil遺伝子陽性株ではspeA遺伝子を有していたが、sil遺伝子陰性株では、すべての株でspeA遺伝子は陰性であった。また、すべてのsil遺伝子陽性株ではazithromycinに感受性を示し、マクロライド耐性遺伝子は保有していなかった。 薬剤感受性と侵入遺伝子の検討では溶連菌は抗菌薬に対して耐性を示すとともに、細胞内侵入能が低くなると考えられる。
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