研究課題/領域番号 |
21592207
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
湯坐 有希 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (30277090)
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研究分担者 |
加藤 邦孝 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (60147296)
横川 裕一 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (90468687)
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キーワード | 頭頸部扁平上皮がん / 表皮成長因子受容体 / 遺伝子変異 / 分子標的薬 / ゲノム医科学 |
研究概要 |
平成21年度は頭頸部扁平上皮がん82検体を用い、表皮成長因子受容体(EGFR)の全長について遺伝子変異の検索を行いました。その結果、6検体(7%)でEGFR遺伝子に変異を認めました。1つはL858Rといわれる肺がんで2番目に多い遺伝子変異でしたが、その他にこれまで報告のない4種の新しい遺伝子変異を認めました。そのうち3つはいわゆる一塩基置換によるアミノ酸置換(E709K、V765G、G1022S)で、残る1つは3塩基付加による1アミノ酸付加変異(ins770G)でした。興味深いことにこれらの変異は他のがん種でも高頻度に変異が認められた、エクソン19、21に位置し、これらのエクソンが機能上、がん化に強くかかわる活性部位であることがわかりました。逆に一部のがん種で報告されている細胞外ドメインのEGF結合部位の変異は1例も認めませんでした。 これら新しく発見した変異型EGFRのベクターを作製し、Ba/F3細胞(増殖するためにインターロイキン2が必要な細胞株)に過剰発現させるようにウイルスを用いて導入したところ、V765G以外の変異型EGFRを導入したBa/F3細胞はインターロイキン2非存在下で増殖するようになりました。タンパク質レベルでEGFR下流の信号伝達系を検討すると、EGFRのリン酸化部位を常時リン酸化(活性化)し、さらに下流に位置するStat3を常時リン酸化(活性化)し、腫瘍原性を示すことがわかりました。次いで、これらの変異型EGFRを導入したBa/F3細胞に2種のEGFR阻害剤(erlotinibとCL-387,785)を投与したところ、これらの薬はEGFRのリン酸化を阻害し、さらにStat3のリン酸化をも阻害し、細胞増殖を阻止することがわかりました。つまり、これらの変異型EGFRはこれら阻害剤に程度の差はありますが感受性を示す変異であることがわかりました。
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