研究概要 |
本研究では、ヒトの第一次味覚野の場所を同定することを目的とし、同一の実験協力者に対して味覚誘発脳磁場計測および拡散MRI撮影を行った。味覚誘発脳磁場計測には産業技術総合研究所に設置されている64チャンネル全頭型SQUIDシステム(CTF Systems Inc.(現VSM Medtech Ltd.)製)を用い、拡散MRIの計測には首都大学東京に設置されている3テスラの拡散MRI装置(Philips製)を使用した。まず、味覚に対する主観的評価において障害を感じていない22~42歳の男女7名(男性2名、女性5名、平均年齢29.0±8.9歳)を対象に味覚誘発脳磁場の計測を行った。脳磁場計測装置のSQUIDセンサと実験協力者の頭部との位置関係を知るために、実験協力者の鼻根部と両耳珠部にコイルを取り付けた。味覚刺激として0.3M食塩水を用い、刺激提示時間400ミリ秒、刺激提示間隔20秒という設定で1セッションあたり60試行を実施した。計測中、実験協力者は1試行ごとに、0~5の6段階尺度(0:無味~5:強烈)を用いて味覚刺激の内省強度を評定した。データ解析において、瞬きなどのアーチファクトが混入した試行を除外した後、加算を行ったところ、加算回数は42~60試行(平均55.4±6,9試行)であり、内省強度は1.7~3.2(2.5±0.5)であった。続いて、味覚誘発脳磁場計測に参加した実験協力者の内、22~42歳の男女4名(男性1名、女性3名、平均年齢32.5±10.5歳)を対象にMRIによる脳の拡散強調画像撮影を行った。実験協力者には、脳磁場計測の際にコイルを取り付けた箇所と同じ部分にマーカーを取り付けた。脳磁場データから推定された脳の活動部位の座標をMR画像にマッチさせることにより神経繊維の連絡を追跡できる。脳磁場の活動部位の推定およびMR画像とのマッチングについては現在解析中である。
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