【背景と目的】近年、癌幹細胞の概念が提唱され1997年急性骨髄性白血病において癌幹細胞の同定の報告以後、他の固形癌に於いても報告されている。2007年にはPrinceらにより頭頸部扁平上皮癌におけるSide Population(SP)細胞の同定とその癌幹細胞としての可能性が報告された。しかしながらその機能は十分に解明されていない。そこで我々は舌扁平上皮癌細胞株SASを用いてSP細胞の有無と癌幹細胞としての機能を検討した。さらに、頭頸部癌細胞株でEGFRの発現を確認し、発現している細胞株についてSP細胞とnon-SP細胞でEGFR発現の差を検討する。【方法】フローサイトメトリーによりDNA結合色素であるHoechst33342を用いSP細胞を回収した。SP細胞とNon SP細胞をRT-PCRで比較検討した。また、免疫染色でEGFR発現の有無を検討する。【結果】SASにおいてSPは0.8%認められた。Oct3/4、Nanogら神経幹細胞のマーカーがSP細胞においてnon SP細胞と比較して発現の亢進を認めた。一方Notchは両細胞間で有意な発現の差を認めなかった。CD133は両細胞ともに発現を認めなかった。さらに、SCC4細胞株で同様にSP細胞を採取し様々な幹細胞マーカーの発現を検討している。一方、SAS細胞とSCC4ではEGFR発現を確認したが、SP細胞におけるEGFR発現の差は現在検討中である。【考察】SASではSP細胞が存在し、それらは癌幹細胞としての機能を有していると考えられた。頭頸部癌における癌幹細胞の同定とその機能の評価は癌の生物学的悪性度の指標となる可能性があり、EGFRは高率に発現していることから、癌幹細胞とEGFRとの関連をさらに解明すべきと考えられる。
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