網膜色素変性は視細胞または網膜色素上皮細胞に特異的に発現する遺伝子の異常により発病することが近年明らかになってきた。現在までに約50種類の原因遺伝子が判明しているが、病気の本質である視細胞死がどのような分子機構で起こっているのかについては不明な点が多い。それは非常に他種類の原因遺伝子があり、かつ同じ遺伝子変異でも病態や病型が異なることが知られ、遺伝的異質性が高いことが理由となっている。本研究課題では網膜色素変性の病態を左右する疾患関連因子として加齢黄斑変性関連遺伝子であるARMS2遺伝子多型の関与を仮定して網膜色素変性の中心視野の進行度とARMS2遺伝子多型の相関を検討することにある。前年度までに採取した網膜色素変性患者80例の血液からゲノムDNAを精製し、ARMS2遺伝子多型を遺伝子診断にて決定した。遺伝子診断と視野進行度との関係を調べるため、患者の中心視野障害の進行度をハンフリー自動視野計の10-2プログラムにて経時的に測定した。視野の進行度の計測は連続する2回以上の視野測定法にてMDslopeを測定し、各遺伝子多型との間に重症度の差異がみられるかいなかを検定した。その結果、現在の症例数の数がさほど多くなかったこととも関連すると考えられるが、各遺伝子多型と網膜色素変性の重症度との間には明確な関連性は見いだされなかった。しかし、今後、症例数を増やすことによってさらに新しい関係が見いだされる可能性があり、引き続き検討を続けることとした。
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