研究概要 |
網膜血管の状態を保護、安定化、または病態の悪循環による悪化を促進しうるシステムとして、網膜血管内皮-硝子体細胞連関及び神経膠細胞連関について分子レベルで明らかにし、その破綻した病的状態としての糖尿病網膜症の病態を分子レベルで検討し治療薬開発の新しい分子ターゲットを明らかにする。また、薬物治療開発推進ため治療薬開発段階で薬物の有効性、安全性を検討するスクリーニングシステムの開発を目指す。 網膜血管内皮細胞と硝子体由来細胞の共培養系を樹立した。この共培養系にIL-1α、IL-1β、IL-6,TNF-α、VEGFを作用させ、さらに抗VEGF抗体、ステロイド薬を作用させた。各サイトカインのうちTNFαを除くサイトカインで血管内皮細胞は増殖が促進され、VEGFの効果のみが抗VEGF抗体で抑制された。ステロイド薬は上記のサイトカインのうち、TNFαを除くサイトカインの作用を抑制した。これらの血管内皮細胞への直接作用は硝子体由来細胞の共培養により減弱され、生体内での薬物動態は生体内での検討が重要とかんがえられた。 糖尿病黄斑浮腫(DME)に対するステロイドによる治療効果を検討した。あらたに開発されたステロイド点眼治療の効果について検討した。対象は3か月間治療歴がなく点眼治療を行った25例36眼(男性11例19眼、女性14例17眼)で、1か月間は1目4回、以後2か月間は1日2回点眼し、3か月間で終了とした。長期経過をlogMAR視力、光干渉断層計による中心窩網膜厚について検討した。平均logMAR視力は点眼開始時0.55→終了時0.53(p=0.75)、平均中心窩網膜厚は点眼開始時515.5μm、点眼→終了時322.1(p<0.01)であった。点眼終了時に有効であった眼の後9眼が再発した。生命表法を用いた検討では10か月後まで40%で有効性が維持された。生体眼内での治療効果はステロイドが有効であることを明らかにした。
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