研究課題
1)細胞研究 : 血管バリアー機能障害の分子メカニズムで、硝子体細胞が、バリアー機能不全を引き起こす炎症性のサイトカインとどのように関連しているかを検討し、次のステップである治療法開発へとつなげる研究をおこなった。ビアルロン酸(HA)は、グリコサミノグリカンであり細胞外マトリックスの主要成分であり、細胞遊走、細胞増殖、分化、抗炎症において重要な役割を担っている。眼増殖性疾患時に硝子体に放出されるIL-1の硝子体細胞HA産生の制御機構、HAのIL-1誘導炎症反応制御を検討した。当講座で樹立したブタ硝子体由来細胞(PH細胞)を用いた。IL-1α、βをPH細胞に投与後、細胞増殖、HA産生レベル、HA合成酵素(HAS)1、2、3ならびにHA分解酵素(Hyal)1、2、3のmRNA発現レベルを、それぞれMTTアッセイ、HA結合アッセイ、RT-PCR法で観察した。HAを過剰発現させたPH細胞に対して、IL-1を投与し、IL-6、VEGF mRNA発現レベルを観察した。PH細胞において、IL-1αおよびβによって、細胞増殖は抑制されなかったが、HA産生の増加とHAS2 mRNA発現亢進が観察された。また、HAを過剰発現させたPH細胞にIL-1を投与しても、IL-6、VEGFのmRNAの発現変化は観察されなかった。PH細胞において、IL-1はHA産生を制御する可能性が示唆された。HAはIL-1が誘導する炎症反応を制御しない。2)糖尿病黄斑浮腫治療の臨床研究 抗炎症作用が糖尿病黄斑浮腫(DME)治療薬として有効か調べた。糖尿病全身コントロールに抵触しない新しいステロイド点眼薬のdifluprednate ophthalmic emulsion O.05%をDMEに対する治療として検討した。本剤はemulsionであるため、後眼部へ移行しやすい特徴をもつ。点眼薬という投与法のメリットとして、非観血的治療であり安全である。軽症のDMEや汎網膜光凝固中にDMEが発症した症例も適応となり、網膜厚の有意な減少が認められた。また、硝子体手術後に残存する重症のDMEに対して硝子体内注射は薬物クリアランスの点から有効性が低いと考えられるが、点眼治療は網膜厚が有意に減少した。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (2件)
臨床眼科
巻: 65 ページ: 1027-1041