研究概要 |
【糖尿病網膜症におけるタンパク質の翻訳後修飾の解析】 糖尿病網膜症およびそれ以外の疾患(黄斑前膜,網膜剥離,増殖硝子体網膜症)の硝子体切除検体において,タンパク質の翻訳後修飾の中でもタンパク糖化最終産物(AGE:advanced glycation end products)およびD-アミノ酸含有タンパク質の量をELISA法で定量した.その結果,糖尿病網膜症において非糖尿病眼と比較して有意にAGE:およびD-アミノ酸含有タンパク質の量が増加しており,病勢と反映していた,よって,AGEだけではなくD-アミノもまた糖尿病網膜症のバイオマーカーとなり得ると考えられた. 【タンパク質の翻訳後修飾がもたらす眼疾患のメカニズムの解明】 白内障において,アルファおよびベータクリスタリン分子におけるD-アミノ酸の局在を同定し,白内障発生の分子メカニズムの一端を解明した. 加齢に伴う眼疾患であるClimatic Droplet KeratopathyがAGEおよびD-アミノ酸を豊富に含むタンパク質の異常凝集によって生じることを明らかにした. 遺伝性疾患で角膜が進行性に混濁する角膜ジストロフィーが,AGEおよびD-アミノ酸を豊富に含むタンパク質(主にラクトフェリンとTGFBI)の凝集物であることを見いだした. さらに角膜ジストロフィー由来のTGFBI合成ペプチドを用いて,アミロイド形成をin vitroで解析することにより,角膜ジストロフィーにおけるアミロイド形成過程を詳細に明らかにすることができた.さらにTGFBI由来の合成ペプチドをチオフラビンTを用いて標識した後に442nmのレーザーを照射することにより,アミロイド線維を特異的に破壊することに成功した.この成果は,角膜ジストロフィーの光線力学療法に道を開いたこととなる.
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