これまでの本邦における緑内障の疫学調査において緑内障の有病率が算出された。疫学調査の対象は40歳以上の中高齢者であり、加齢とともに罹患率の増加が確認された。日常の臨床の現場においてもより若年者が緑内障と診断されることもあり、これまでの報告よりさらに年齢層の低い集団をもとにした調査が必要と考え、今回の研究に至った。対象を20歳以下にするため、連携研究者の勤務先である高等専門学校においてデータを収集することとなった。データの採取に使用する機器類による測定(視力、屈折・角膜曲率、非接触眼圧測定、眼軸長測定、無散瞳眼底写真撮影、視神経乳頭立体撮影、視神経乳頭形状解析装置による撮影、自動視野計による視野測定)は、日常臨床で使用している装置であるが、対象が未成年であることも考慮し、金沢大学医学部の倫理委員会に研究の申請をし、承認をえた。その後当研究の連携研究者である眼科教授の名において、対象となる高等学校・高等専門学校長に研究の趣旨および参加において対象となる生徒およびその保護者に対する説明と同意のあとで、参加に関しては生徒本人および保護者の自由として許可申請を出し、学内審査で了承を得た対象者および保護者に文章および連携研究者を通して説明および同意を取得した。対象となる生徒は1340名であったが、最終的に本人と保護者から同意を得られた433名を対象に緑内障検診を施行した。前述の検査を連携研究者である眼科医師、視能訓練士、眼科医療従事者により行われた。一次検診として行った各検査データを金沢大学眼科に送付し、連携研究者による判定を行った。眼圧が20mmHg以上、視野検査で異常の検出、眼底写真で眼底に異常が疑われたものを抽出し、二次検査を行った。二次検査には433名中38名が対象となり、緑内障と判定されたものはいなかった。
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