近年、光干渉断層計(以下OCT)により網膜、硝子体、最近では前眼部の新知見が次々と発見されてきている。一方、脈絡膜はOCTを含めたさまざまな検査機器を用いても網膜下の組織であるためにその詳細な研究は困難でありほとんどされてこられなかった。しかし、最近になりOCTの性能が向上するにつれ、脈絡膜がより詳細に描出されるようになりその評価が可能となってきた。本研究では、これまでin vivoでの研究がほとんどされてこられなかった脈絡膜の生理的、病的な変化をOCTを用いて明らかにしようとして行われた。 平成21年度は、主に正常眼の脈絡膜について解析を行った。脈絡膜の厚みは部位により異なるため、眼底全体で脈絡膜の厚みがどのようになっているか解析を行った結果、黄斑部においては視神経乳頭近辺が薄くなっており、また視神経乳頭周囲については下方が薄くなっていた。次に黄斑部と視神経乳頭周囲を合わせて脈絡膜厚のマッピングを行ったところ、眼底の視神経乳頭下方から眼底下方領域に脈絡膜厚の菲薄化領域が広がっていることが判明した。この所見はほぼすべての症例にみられたことから、一般的な解剖学的な所見であると推測された。また、脈絡膜血管そのものについて解析を行ったが、脈絡膜中大静脈はインドシアニングリーン蛍光眼底造影だけでなくOCTを用いても同定することが可能であり、さらに血管径について評価することも可能であった。そこで、脈絡膜血管の形について解析を行ったところ、脈絡膜厚と脈絡膜血管の縦横比は相関しているおり、脈絡膜厚が厚い部位ほど血管の形が丸くなっていることが判明した。この所見も一般的な解剖学的な所見である、と推測された。これらの研究により脈絡膜解析の基礎となるべき解剖学的な知見を得ることができた。
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