近年、光干渉断層計(以下OCT)により網膜、硝子体、最近では前眼部の新知見が次々と発見されてきている。一方、脈絡膜はOCTを含めたさまざまな検査機器を用いても網膜下の組織であるためにその詳細な研究は困難でありほとんどされてこられなかった。しかし、最近になりOCTの性能が向上するにつれ、脈絡膜がより詳細に描出されるようになりその評価が可能となってきた。本研究では、これまでin vivoでの研究がほとんどされてこられなかった脈絡膜の生理的、病的な変化をOCTを用いて明らかにしようとして行われた。 平成22年度は、正常眼のみならず、疾患眼についてもOCTを用いた脈絡膜の解析を行った。中心性漿液性脈絡網膜症では、投与ベルテポルフィン量を半量にして行う光線力学療法では菲薄化が起きる一方、投与ベルテポルフィン量を1/3にすると菲薄化はほとんどおきないことが判明した。平成21年度の研究により、正常眼においては、脈絡膜中大静脈の形は脈絡膜の厚さと相関があることが判明したが、中心性漿液性脈絡網膜症において脈絡膜の菲薄化が起きる時には脈絡膜静脈の縦径は低下するが横径にはあまり変化がないことが示された。強度近視眼の解析では、近視性合併症僚眼である強度近視眼では、中高年においても眼軸の延長が起きている症例があり、この時後部ぶどう腫の進展、脈絡膜の菲薄化がみられること、後部ぶどう腫高は黄斑でも上方で有意に増高すること、眼軸長の延長量は黄斑上方の後部ぶどう腫の高さの増加量と相関していることがわかった。これらのことから、脈絡膜は静的で変化のない組織ではなく、状況に応じてさまざまな変化が起きる組織であることが判明した。
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