本研究は、網膜錐体cGMP依存性カチオンチャネル(=CNGチャネル)の構造-機能相関を明らかにすることと、細胞膜での発現誘導を試みることにより、同種の遺伝性疾患(CNGチャネルの場合は杆体1色覚)の治療法を探ることを目的としている。 今年度の研究実施計画にそって成果を以下に記す。(1)CNGαサブユニットの膜発現の検討-1:細胞外領域にHAタグとID4タグを導入したが、前者はタンパク質発現はみられるもののチャネル機能が検出されず、また後者は導入自体ができず、いずれも所期の目的を果たせなかった。(2)CNGαサブユニットの膜発現の検討-2:昨年度に、CNGαサブユニットのN端にロドプシンの膜貫通ドメインを導入して7回膜貫通型としたチャネルが機能することをパッチクランプ法で確認していた。今年度はこれを受け、細胞膜での発現を抗ロドプシン抗体で検出する試みを行ったが、うまく検出できなかった。(3)ミスセンス変異を持ったCNGαサブユニットの細胞膜発現の検討:前回の報告時(Muraki-Odaら、BBRC(2007))から後に、αサブユニット(CNGA3)で19種のミスセンス変異が報告された。これらをそれぞれ野生型cDNAへ導入しパッチクランプ法を適用した。cGMPによって活性化される膜電流が記録できる変異(P95L、G228K、T245M、A469T、V540I、R563C、G590K、A619V、L633P)と、記録できない変異(F249S、D252N、Y263D、V266M、R274S、G397V、S401P、L433W、R439W、G548R)とに分類することができた。(4)細胞膜発現誘導の検討:transientな発現-パッチクランプの系では結果を定量的に示すことが難しいことが分かったため、stableな発現-カルシウムセンサーの系を構築中である。
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