研究課題/領域番号 |
21592233
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
畑 快右 九州大学, 大学院・医学研究院, 准教授 (90346776)
|
研究分担者 |
石橋 達朗 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (30150428)
園田 康平 九州大学, 大学病院, 講師 (10294943)
|
キーワード | 糖尿病網膜症 / 予防的治療 / 微小血管障害 / 血管内皮細胞 / 白血球 / Fas / FasL / Rho / ROCK / fasudil |
研究概要 |
糖尿病網膜症による完全失明者は着実に減少傾向にあるが、VISION2020で掲げる「予防・治療可能な失明者の根絶」にはほど遠い状況である。進行した網膜症による視覚障害は多くの場合不可逆性であり、予防的治療戦略の重要性がより明確になってきている。 網膜症早期の主病変は網膜微小血管障害であり、そのメカニズムの一つとして、活性化した白血球の網膜微小血管内皮細胞への接着に始まる血管内皮細胞の機能的・機械的障害があげられる。 我々は今回の研究で、糖尿病網膜の血管内皮細胞ならびに白血球で細胞の接着や遊走などに関わる重要な細胞内伝達分子であるRho/ROCK経路が活性化していることを初めて明らかにした。 Rho/ROCKの活性化が血管内皮細胞においては重要な細胞接着分子であるICAM-1の発現亢進に関わり、白血球においてはインテグリンの細胞膜表面での発現を亢進させ、白血球と血管内皮細胞の接着亢進に関わっていることを示した。さらに、接着した白血球による内皮障害にはFas/FasL経路が関与していることを示し、ROCK阻害剤であるfasudilはFas/FasL経路を阻害することで内皮細胞の障害を阻害しうることも示した。 網膜症に対する薬物治療が確立していない現状において、既に脳血管領域で臨床応用されているROCK阻害剤が網膜症眼における白血球の接着自体を、更には一旦接着してもその後の血管内皮障害を阻害しうる薬剤であることが明らかにされたことにより、網膜症早期における新規治療戦略の可能性を示すことが出来たと考えられる。
|