研究課題/領域番号 |
21592233
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研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
畑 快右 福岡歯科大学, 歯学部, 教授 (90346776)
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研究分担者 |
石橋 達朗 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (30150428)
園田 康平 九州大学, 大学院・医学研究院, 准教授 (10294943)
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キーワード | 糖尿病網膜症 / 増殖硝子体網膜症 / 硝子体細胞 / ステロイド / TNF-α |
研究概要 |
硝子体手術がめざましく進歩した現在でも、増殖糖尿病網膜症や増殖硝子体網膜症といった眼内増殖性疾患によって社会的失明に至る患者は後を絶たない。特に増殖膜の瘢痕収縮による牽引性網膜剥離は、一旦黄斑部に及ぶと手術で解剖学的な復位を得ても視力回復に限界があったり、歪視などの後遺症を残すなど、治療の大きな妨げとなっている。 今回我々はこれまでに提唱してきた硝子体細胞の網膜硝子体疾患への関与と治療について更に検証した。硝子体細胞はウシ眼球より分離培養し、炎症性サイトカインの一つであるTNF-αによる硝子体細胞の増殖能、遊走能、更には増殖膜の収縮能について検討し、これらに対するステロイドによる治療の有効性についても検討した。 TNF-αは硝子体細胞の増殖を濃度依存性に促進したのに対してステロイドは有意に抑制することが確認された。細胞遊走能について、やはりTNF-αは硝子体細胞の遊走能を促進したがステロイドはこれに対して有意な作用を示さなかった。また、硝子体細胞を埋め込んだタイプIコラーゲンゲルを用いた瘢痕収縮モデルを用いた検討では、TNF-αは硝子体細胞による増殖膜の瘢痕収縮を弱いながらも促進し、ステロイドは更に収縮を促進するように働くことが確認された。 これらのことから、TNF-αは硝子体細胞を成分の一つとする増殖膜の形成から瘢痕収縮までを促進し、一連の病態悪化の一因となることが示唆された。一方、治療薬として頻用されているステロイドについては増殖膜が形成される初期段階では病態制御が期待されるが、一旦増殖膜が形成されて瘢痕収縮の段階に至るとむしろ逆効果であることが予測され、そのような段階ではこれまで我々が提唱してきたROCK阻害剤等による病態制御が必要であると考えられた。
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