研究概要 |
加齢黄斑変性は眼内に蓄積した加齢現象に起因して発症する疾患であるため、病態解明や発病予防のためには眼内で生後から出現する加齢現象を理解することが不可欠である。眼底における最初の加齢変化は生後まもなく発生するもので、網膜色素上皮(RPE:retinal pigment epithelium)細胞内へのリポフスチンと呼ばれる自発蛍光を発する難溶性顆粒の蓄積である。近年、画像診断技術の進歩に伴い、蓄積したリポフスチンに由来する微弱な自発蛍光の検出が可能となった。通常の加齢変化としてのリポフシチン蓄積は眼底の均一な背景蛍光として観察できる。一方、加齢黄斑変性発症前には特殊なパターンを示す異常眼底自発蛍光を認める場合があり、加齢黄斑変性の発症や病変拡大を予見できる重要所見である。特徴的なパターンはpatchりinear, lace-like, reticularなどに分類されているが、これらのパターンの違いに関する病理組織学的検討は十分に行われていない。我々は、これまでの研究で、リポフスチン模擬顆粒として最終糖化産物からなる微粒子を作製し、家兎の網膜下に移植することによりRPE細胞内へのリポフスチン蓄積を模倣したところ、硬性ドルーゼンや脈絡膜新生血管を認め、加齢黄斑変性モデルとしての有用性が示された。また、このモデルにおいてもヒトと同様のパターンを示す異常眼底自発蛍光を認め、lace-likeを示す部位は、ヒトで観察されるのと同様に、地図状萎縮へと進展した。次に、RPE細胞の3次元球体培養が培養細胞の脱分化の問題を解決し、よく分化した一層の上皮を形成、さらに表面にブルッフ膜の形成や生理的に眼内で行われているリポ蛋白の排泄をin vitroで観察できることがわかった。今後、家兎加齢黄斑変性モデルやRPE細胞の三次元培養を用いて、加齢黄斑変性の病態解明を進めて行く予定である。
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