研究概要 |
平成23年度は、ヒト培養線維柱帯細胞のデキサメサゾン添加によるメチル化状態の変化の網羅的に解析の結果を受けて、メチル化状態が有意に変化したRICS,RGS6,GPR126遺伝子の機能解析を施行した。GTPase調節因子であるR工CSは、デキサメサゾン添加により遺伝子のエクソン部位にメチル化が生じ、その発現量が減少していることが判明した。また7回膜通過型受容体であるGPR126遺伝子は、デキサメサゾン添加により遺伝子のエクソン部位に脱メチル化が生じ、その発現量が減少していることが判明した。さらにGTPase活性化因子であるRICSはCpGサイトがアイソフォーム1特異的エクソン上に存在し、エクソン上のCpGサイトのゲノムメチル化がスプライシングに影響し、RICSアイソフォーム1の発現量がデキサメサゾン添加により減少することを発見した。このことはヒト培養線維柱帯細胞のデキサメサゾン添加によるゲノムのメチル化状態の変化が単純な遺伝子発現の量的な調節にとどまらず、mRNAのスプライシングなど、遺伝子発現の質的な変化にも関係していることを示唆する所見と考える。また平成22年度に引き続き、ゲノムのメチル化と合わせて他のエピジェネティクス因子であるヒストンのアセチル化の影響を調べるため、あらかじめデキサメサゾン処理した培養線維柱帯細胞を脱アセチル化剤であるTSAと24時間反応させ、デキサメサゾン未処理のサンプルと合わせてデキサメサゾンの影響によるヒストンアセチル化によってその発現に影響を受ける遺伝子を網羅的に解析した。その結果組織の線維化に影響するフィブリノーゲン遺伝子がヒストンアセチル化により制御されていることを発見し、現在その機能的意義を解析中である。
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