研究課題
我々は昨年度までの研究で、酸化ストレス増加モデルマウスであるCu,Zn-superoxide dismutase1(SOD1)欠損マウス(SOD1KOマウス)を用いて、加齢とともに涙腺の病理組織学的変化が起こり、高週齢のSOD1KOマウスに涙液分泌障害と眼表面障害が発症することを証明した。このことはSOD1KOマウスがヒトにおけるドライアイ発症モデルとして使用可能であることを示唆している。今年度は涙腺の病理組織学的変化のメカニズムに関して集中的に研究を行った。50週SOD1KOマウスでは上皮系細胞マーカーであるEカドヘリン染色が減弱し、問葉系細胞マーカーであるα-smooth muscle actin(SMA)染色陽性細胞が増加し、mRNAレベルで上皮間葉移行(Epthelial Mesenchymal Transition(EMT)の視標とされるαSMA/Eカドヘリン比が有意に上昇していた。透過型電子顕微鏡では50週SOD1KOマウスの一部の腺房上皮細胞で微絨毛が間質側に発現し、間質側に遊走している所見を認めた。これらより、SOD1KOマウスにおける涙腺の繊維化にEMTが関与していることが強く示唆された。またモデルマウスの結果がヒトでの変化に結びつくかどうか検討するために、ヒト剖検涙腺サンプルの病理組織学的に検討を行った。これによってヒトでも年齢とともに酸化ストレスマーカーが強く発現することが免疫染色で確認された。また加齢による涙腺の炎症、繊維化も明らかになった。
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American Journal of Pathology
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