研究課題
目的:神経ペプチドであるPACAPはラットにおける高眼圧または視神経損傷による視神経傷害を抑制することが報告されている。近年、網膜傷害誘導後に網膜に未分化神経系細胞が観察され、その細胞が神経節細胞への分化能を有していることから、成体網膜神経幹細胞の存在が示唆された。しかし、PACAPによる正常時および網膜障害時における網膜神経幹細胞の増殖・分化に対する作用は不明である。そこで、本年度はまずマウス硝子体内へのNMDA硝子体内投与による網膜神経障害モデルを確立し、PACAP同時投与による網膜保護効果について検討した。方法と結果:成熟雄マウスをセボフルレンにて全身麻酔し、角膜輪部よりNMDA(40nM)を硝子体内に投与した。PACAP投与群ではPACAPをNMDAと同時に硝子体内に投与した。投与1、3、7、14日後に眼球を摘出して網膜連続パラフィン切片を作成し、HE染色およびTUNEL染色後に網膜神経節細胞数を計数した。NMDA投与群の神経節細胞数は投与1日後から減少し始め、7日目以降は生存細胞数は一定となった。神経細胞死を検出するためにTUNEL染色を行ったところ、NMDA投与3日後にTUNEL陽性細胞が最大となった。PACAPの神経節保護効果を示す最適有効濃度を評価した結果、PACAP10-10M投与群の神経節細胞数は有意に高値を示した。さらに、投与3日後のTUNEL陽性細胞はNMDA単独投与群と比較して有意に減少した。考案・結論:以上の実験結果よりNMDA投与によるマウス網膜傷害モデルが確立され、さらに外因性PACAPの微量投与はNMDAによる網膜神経節細胞死を抑制することが明らかになった。今後は正常時および網膜傷害時に増殖細胞を標識するBrdUを用いて成体神経幹細胞を標識し、PACAPの成体幹細胞に対する作用を評価する。
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