研究課題
緑内障は進行性の網膜神経節細胞死と定義される。現在、緑内障に対する効果が確立されているものは降眼圧治療のみであるが、これに抵抗性の緑内障も存在するため、網膜神経細胞を保護する薬剤の開発が望まれている。本年度申請者らは野生型マウス及びヘテロ型PACAPKOマウスを用いてNMDA硝子体内投与による緑内障モデルを作成し、網膜神経節細胞死を評価した。野生型マウスにおいて、NMDA投与群の神経節細胞数は投与1日後から減少し始め、7日目以降の生存細胞数は一定となった。神経細胞死を検出するためにTUNEL染色を行ったところ、NMDA投与3日後にTUNEL陽性細胞が最大となった。一方、ヘテロ型PACAP遺伝子欠損マウスでは網膜のPACAP発現量が約50%となっており、NMDA投与後の網膜障害が野生型と比較して有意に増加した。以上の結果より内因性PACAPはNMDA誘導性の神経節細胞死に対して保護効果を示すことが示唆された(Endo et al. 2011)。さらに、NMDA投与後の網膜では内顆粒層におけるBrdU標識細胞が投与1日目から増加し3日目でピークとなった。これらBrdU陽性細胞を成体網膜神経幹細胞と考えられているミュラー細胞マーカーとの2重免疫染色を行ったが、技術的に両陽性細胞の検出は困難であった。しかし、マイクログリア/マクロファージマーカーとの2重免疫染色により、それらBrdU細胞のほとんどがマイクログリア/マクロファージであることが示唆された。さらにPACAP硝子体投与群では網膜神経保護効果を示すとともに網膜内マイクログリア/マクロファージ数も増加させることが明らかになった。以上の結果から、PACAPは免疫系細胞を調節することにより神経保護作用を発揮している可能性が考えられる。
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J Mol Neurosci
巻: 43(1) ページ: 30-34
巻: 43(1) ページ: 22-29
http://www.showa-u.ac.jp/sch/med/major/anat-1/rsch_achievement/