研究概要 |
小胞体ストレスが糖尿病や神経変性疾患の原因であることが明らかになりつつある。また小胞体ストレスによって炎症性サイトカインの発現が増強する。この小胞体ストレスによる炎症性サイトカインの誘導が糖尿病網膜症や加齢黄斑変性の発生の一因であるとされている。網膜色素上皮の外網膜血液関門としての機能は糖尿病網膜症や加齢黄斑変性の病態に関与する。そこでヒト網膜色素上皮細胞に小胞体ストレスを誘導する薬物であるtunicamycin(TM)、thapsigargin(TG)を投与して小胞体ストレスを誘導し、tight junctionの変化を検討した。PCRの結果mRNAレベルでTM, TG負荷でGRP78/BipおよびCHOP(40倍以上)の発現が増加していた。ZO-1、occludin、claudin1の発現も増加した。さらにVEGFとoccludinは経時的に発現が増加した。蛋白レベルでもコントロールと比較してoccludin、claudin1はTM, TG負荷ともに発現上昇を認め、ZO-1はTM負荷で発現上昇を認めた。免疫染色でもZO-1、occludin、claudin1の発現はコントロールと比較して増強していた。経上皮電気抵抗測定では、コントロールと比較してTM, TG負荷ともに抵抗値の上昇を認めた。よって小胞体ストレスを負荷することでtight junctionが増強していることが確認された。加齢黄斑変性の発症にはドルーゼンが関与しているとされ、ドルーゼンにはアミロイドβが含まれている。アミロイドβが小胞体ストレスにより発生するという報告がある。小胞体ストレスが生じることでドルーゼンが生じ、また今回の結果からtight junctionが増強すると考えられる。よって加齢黄斑変性において発生する網膜色素上皮剥離は小胞体ストレスによるものである可能性が考えられた
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