研究概要 |
小胞体ストレス暴露(tunicamycin(1μg/ml)、thapsigargin(1μM))にて小胞体ストレスマーカー(Bip,ATF6,CHOP,caspase-4)の発現をwestern blot法にて検討した。コントロール群と比較して、小胞体ストレス群では恒常性維持に働くBip,ATF6の発現が増加、一方アポトーシスに働くCHOP,caspase-4の発現も上昇しており、恒常性維持と細胞死へのプロセスの両方が働きunfolded protein responseが最大限に働いた可能性が考えられた。 また小胞体ストレス下での培養液中(トランスウエルを使用しapical側とbasolateral側から採取)の血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor: VEGF)濃度をELISA法にて検討した。apical側のVEGF165濃度は小胞体ストレス群ではコントロールと比較して24時間後に上昇し、basolateral側は48時間後に上昇していた。しかしVEGF濃度の上昇は最大で約1800pg/mlでありtight junctionに影響を及ぼす十分な濃度ではなかったと考えられた。 本研究のtunicamycin、thapsigarginの濃度・暴露時間では小胞体ストレスは網膜色素上皮細胞に対して細胞保護的に働き、tight junctionの機能、構造が増強されていた。VEGFの発現も上昇していたが、経上皮電気抵抗に変化を生じさせうる十分な蛋白濃度ではなかった。このことを臨床と関連して考えると、小胞体ストレスが生じることでtight junctionが強くなり、またアミロイドβの蓄積によりブルッフ膜とRPEの接着が弱くなることで、網膜色素上皮剥離発生に関与するのではないかと考えられた。
|