研究概要 |
本研究の目的は、(1)Rab8およびERM familyの毛様体における正常な相互作用をマウスにおいて確認し、(2)緑内障のモデルマウスであるOptineurinとWDR36のトランスジェニックマウスを用いてRab8およびERM familyの相互作用を検討する、分子細胞生物学および病理組織学の手法を用いた検討のほか、(3)モデルマウスに各種薬剤を投与し、眼圧変動および網膜神経節細胞死についても検討を行い、(4)緑内障発症の頻度に差がつくかどうかを検討する、の4点に大別される。 Rab8およびERM familyの相互作用について言及した論文は現在のところ1本だけであり、視細胞においてmoesin,actin,rac1,phosphatidylinositol-4,5-biphosphateがrab8と協調して働きロドプシン輸送を行う、という内容である(Deretic D,et al. Mol Biol Cell,2004)。本研究テーマは緑内障の病態解明を目指す研究においては最初の試みであると考えられる。またRab8およびERM familyの相互作用が存在すること自体はほぼ確実であると考えられ、さらには対象が緑内障に深く関わっていると考えられるもの同士の相互作用である。平成21年度はRab8 deficient mouseを入手し、眼球切片の作製を完了した。平成22年度はRab8およびERM familyの共局在についてRab8 deficient mouseおよびWild typeについて免疫染色を施行し、結果について解析を行ったが、wild typeにおいてRab8とERM familyの共局在は確認できたものの、Rab8 deficient mouseにおいては意義のある結果は得られなかった。平成23年度は毛様体上皮の初代培養細胞を用いて、培養液に各種薬剤を投与しRab8の発現についてウェスタン解析を行ったが、ステロイドを投与した際に濃度依存的にRab8の発現が抑えられるという結果を得た。他の薬剤ではRab8の発現について明らかな変化を認めなかった。今後、新たに採択された発展的課題にて、Rab8とERM familyの毛様体における機能と緑内障病態の解明を目指してゆく。
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