研究概要 |
我々は以前低酸素培養(2%02)がヒト角膜上皮細胞を未分化に維持したまま増殖を促進することを見出し、本研究においてその機構を解析している。我々は平成21年度においてヒト角膜上皮細胞株に対してHIF-1a,HIF-2aのsiRNAによる抑制実験を行い、HIF-1aではなくHIF-2aの抑制が細胞増殖を抑制すること、この増殖抑制は低酸素濃度下のみならず、正常酸素濃度下においても起こることを見出した。 平成22年度においては以下の実験を行った。HIF-1aおよびHIF-2aは細胞周期のG1期をc-Mycを介して制御することから、HIF-2a抑制の細胞周期に対する影響を核蛍光染色後のフローサイトメトリーおよび蛍光顕微鏡観察により確認した。予想どおりHIF-2aの抑制によってS期およびM期の細胞は減少していたものの、予想に反してG1期ではなくG2期の細胞が増加していた。また抑制実験に加えて、HIF-1aおよびHIF-2aの遺伝子導入が細胞増殖に与える影響の検討も行った。正常酸素濃度および低酸素濃度下において、どちらのHIF-aを導入した細胞も、コントロールベクター導入細胞に対して細胞数の有意な増減を認めなかった。 これらの結果は、HIF-2aが角膜上皮細胞の恒常性維持に必須であり、HIF-2aの増加は細胞増殖には影響を与えないものの、HIF-2a抑制でG2 arrestが引き起こされる可能性を示唆する。今後はどういう機構でHIF-2a抑制時にG2 arrestが引き起こされるかを確認したいと考えている。
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