研究概要 |
我々は,糖尿病網膜症の発症機序に一つに硝子体腔に存在するII型コラーゲンおよび網膜内境界膜に存在するIV型コラーゲンに対する自己抗体が産生され,それが糖尿病黄斑浮腫や増殖糖尿病網膜症の発症機序の一つになっているのではないかという仮説をたて,実験を開始した。インフォームドコンセトを得たうえで,増殖糖尿病網膜症および裂孔原性網膜剥離(全身的に糖尿病なし)の患者の硝子体手術時に採取した硝子体ゲルおよび同症例の血清をサンプルとして,その中の抗II型コラーゲン抗体をELISA法を用いて定量した。硝子体では糖尿病網膜症の1例において抗II型コラーゲン抗体が検出され,血清では有意差は得られなかったものの(p=0.17),糖尿病網膜症は裂孔原性網膜剥離よりも高い傾向が認められた。 ・糖尿病網膜症60.0±36.5unit/ml (n=20) ・裂孔原性網膜剥離34.2±38.9unit/ml (n=20) 今後はさらにサンプル数を増やして,有意差がでるか検討する予定である。また,硝子体では1例にしか抗II型コラーゲン抗体が検出されなかったが,ELISA法の感度を上げることができるか検討する予定である。コントロールも裂孔原性網膜剥離以外に黄斑上膜や黄斑円孔の症例も対象とする予定である。 一方,網膜ではII型コラーゲンが胎児期を過ぎても産生されている可能性が指摘されているが,低酸素負荷によりII型コラーゲンの産生が亢進することが報告されている。そこで,低酸素負荷マウス(大阪医大第三内科との共同研究)を用いて,網膜におけるII型コラーゲンを定量し,正常マウスと比較したが,現時点の結果では有意差が得られなかった。今後,さらに条件を変えて実験を継続する予定である。
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