研究概要 |
我々は,増殖糖尿病網膜症時に生じる眼内血管新生緑内障が,慢性関節リウマチで関節腔内に生じる血管新生と類似していることから,糖尿病網膜症の発症機序に一つに硝子体腔に存在するII型コラーゲンおよび網膜内境界膜に存在するIV型コラーゲンに対する自己抗体が産生され,それが糖尿病黄斑浮腫や増殖糖尿病網膜症の発症機序の一つになっているのではないかという仮説をたて,実験を開始した。昨年の報告では,血清中の抗II型コラーゲン抗体をELISA法を用いて定量した結果,糖尿病網膜症はコントロールのよりも高い傾向が認められた。 ・糖尿病網膜症60.0±36.5unit/ml (n=20) ・コントロール34.2±38.9unit/ml (n=20) 網膜では低酸素負荷によりII型コラーゲンの産生が亢進することが報告されているので,低酸素負荷マウス(大阪医大第三内科との共同研究)を用いて,網膜におけるII型コラーゲンを定量し,正常マウスと比較したが,残念ながら最終的に有意差は得られなかった。 また,硝子体手術時に得られる硝子体サンプルを用いて,硝子体内の抗R型コラーゲン抗体の測定を試みたが,硝子体出血をきたしている1例のみで検出可能だったが,その他は検出限界以下であった。硝子体中の抗体の検出率が低かったのは,免疫複合体で存在しているためではないかと考え,コラゲナーゼで分解して測定を試みたが,やはり検出できなかった。 さらに特殊な標識技術により、通常のELISAの1千倍から1万倍の感度の超高感度超抗体試薬を使用して,再度実験を試みる準備をしていることころであるが,残念ながら研究期間内に結果をだすことはできなかった。しかし,引き続きこの研究は続行していく予定である。
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