研究概要 |
[目的]マウス肺炎モデルを使用して,in vitroで有効性が確認された薬物に対する治療反応をin vivoで検討した。 [方法]動物としてはGuinea pigを用いた。感染ウイルスには呼吸器感染ではB種ないしC種が主となり,臨床的にも重篤であるが,これはわが国では結膜炎をほとんど起こさないという特徴があるため,C種のアデノウイルス5型および8,37型の複数血清型の感染モデルとした。A549細胞で培養して,十分な力価となったウイルス液を,経鼻的に肺へ吸入させる。In vitroの抗アデノウイルス作用が確認されたザルシタビン,スタブジンおよびシドフォビルを投与開始日を感染前後でいくつかのパターンとした治療スケジュールで全身投与し,発症が抑制されるかどうかを,血中のアデノウイルスDNA量を採血しながらモニタリングし,real-time PCR法で経時的に解析した。 [結果]いずれの血清型も無治療の状態では全身感染が成立した。抗ウイルス薬の予防的投与を行った場合,いずれの薬剤でも有意なウイルスDNAの抑制がみられた。また感染後からの投与ではザルシタビン,スタブジンは全ての血清型でウイルスDNAコピー数の減少がみられたが,シドフォビル投与群では有意な減少は8および37型ではみられなかった。 [結論]抗アデノウイルス作用がin vitroで示されている抗ウイルス薬の感染前投与は全身的に有用であるが,ザルシタビン,スタブジンに比して,シドフォビルの感染後投与はD種に対しての効果が弱かった。
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