研究概要 |
これまでの細胞移植の実験系では、変性進行中の移植については細胞生着率も悪く、ホスト網膜の延命効果を得るほどの移植効率は達成されていない。しかし、これまでの結果から、変性終焉期早期移植にはもっとも機能的生着効率が良いと推察されたため、主として4-6週令のrd網膜変性モデルを用いて、移植時の炎症抑制、移植細胞生着促進因子としてglatiramer acetate,VPA,IL-6抗体などを用いて、移植後6ヶ月までの中長期生着について追加検討した。 その結果、VPAは移植時局所投与では有意に生着細胞数を増加させたが、全身投与及びIL-6抗体による有意な生着の効率の改善はみられなかった。また免疫抑制下他家移植において6ヶ月以上の移植細胞の残存は観察できなかった。これらの結果より、現在、長期経過については自家移植モデルを準備中である。 また、今年度は行動解析と多電極アレイを用いた電気生理学的機能評価について条件検討を行い、多電極アレイでは網膜3次ニューロンから効率よくシグナルを拾う方法を確立、現在移植後網膜で順次機能解析中である。さらに今年度は立体培養による、ES,IPS細胞からの網膜分化法を導入し、ES/iPS細胞から移植に用いる良質の細胞を実用的細胞数用意できるようになった。 更に、NRL-GFPマウスからiPS細胞株を作成し、ここからGFP陽性の視細胞前駆細胞を分化することにも成功した。この方法により当初予定していたES細胞からの分化細胞にNrlプロモーターGFPを導入する方法より効率よく移植細胞が得られるようになった。また、これらの分化網膜シートを移植し、移植後ホスト眼内でも移植細胞が免疫組織学的に成熟視細胞に分化しうることを確認した。
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