研究課題
本研究は胆道閉鎖症(Biliary Atresia;BA)における全身と局所のサイトカイン環境を洞察し、サイトカインネットワークの全体像を把握することを目的とした。着目したサイトカインはTh1/Th2サイトカイン、炎症性サイトカイン、ケモカイン、細胞接着分子、IFNなど20種類で、従来の報告に比し検討項目が格段に多い点に特徴がある。また術前患児より検体を採取したことも注目すべき点である。BAとnonBA(濃縮胆汁症候群・肝内胆管減少症・先天性代謝異常・先天性腸閉鎖症など)患者の血液検体を用いflowcytometryで血清サイトカイン濃度を測定したところ、BA群はnonBA群に比しIL-8に加えselectinやICAM-1などの細胞接着分子が有意に高値であった。一方、Th1系サイトカイン(IFNY・IL-2)やTh2系サイトカイン(IL-4・IL-5・IL-10)に関しては両群で有意差は見られなかった(第38回日本胆道閉鎖症研究会)。BA検体に限ると、その予後不良群(死亡または移植群)は良好群に比し、IFNY・IL-16・IL-4・IL-12・TNF-α・IL-13の術前サイトカイン値が有意に高値であった(第37回日本胆道閉鎖症研究会、日小外会誌,46:509,2010)。また、術時採取したBA18検体・nonBA32検体の肝組織におけるサイトカインmRNA発現量をreal-time PCR法で測定しているが、血清での検討とほぼ同様な傾向がみられており、全身と局所の免疫環境でTh1系サイトカインへの極端な偏向が認められるわけではないようである。現在microdissection法を行い門脈域・小葉域を選択的に採取し、各区域におけるサイトカインの発現レベルをreal-time PCRと免疫組織学染色で検討している。これらの実験結果を統合することで、BAにおける全身・局所(肝組織)・微小環境(門脈域)の各レベルでの炎症の特徴とそれらの関係が明らかとなりつつある。
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DOI:10.1097/MPG.0b013e3182307c9c
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