これまでに小児固形腫瘍92例についてglypican 3の組織発現を検討してきたが、肝芽腫、卵黄嚢腫瘍、未熟奇形腫の一部に発現が認められることが明らかになったが、これは成人腫瘍の知見とも合致するものであった。しかし、腎臓腫瘍における発現では、8例すべてにglypican 3が発現することが明らかとなり新知見と考える。腎腫瘍としては、Wilms腫瘍では、その組織型にかかわらず発現がみられ、腎芽細胞や上皮系細胞に発現が集中していた。また発現頻度は腫瘍によって様々で、その特徴を明らかにすることはいまだできていない。更なる同腫瘍の解析が必要と考える。また、腎腫瘍では有効な腫瘍マーカーが存在しないため治療効果判定などの患児の治療上不利な面があったが、今回明らかになったglypican3の発現は、腫瘍マーカーとしての可能性を示唆するものと考えた。そこで、これらの腎腫瘍における患児の血中濃度測定を行うことが重要と考えて検討したが、市販のELISA測定キットではロットによって測定値が大きく変動することが明らかとなり、現在有用な測定系が使用できない状況である。今後国内共同研究者の協力を得て測定を進めていくことにしている。
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