直腸肛門奇形は新生児外科疾患の中で最も多い疾患の一つであるが、その病態の解明には至っていない。今年度我々は、妊娠9日目のマウスにビタミンAの誘導体であるエトレチナートを過剰投与することにより直腸肛門奇形マウス胎仔を作製した。それらを用いて、発生の4大要因の一つである細胞移動に関わる因子のWnt-5a、Rhoキナーゼ、c-jun N-terminalkinaseに注目し、それらに対する抗体を用いて、免疫組織化学的染色を行った。直腸肛門奇形マウスでは、コントロール群と比較していずれの因子も特に総排泄腔周囲においてその発現が抑制されており、それらの因子の低下が原因の可能性が示唆された。また、直腸肛門奇形患児は術後も便秘に悩まされることが多く、その原因の究明も必要である。この直腸肛門奇形マウス胎仔を用いて、神経伝達分子であるSubstance P、Vasoactive intestinal peptideおよびc-kitに注目し、それらに対する抗体を用いて免疫組織化学的染色を行った。いずれの因子も直腸肛門奇形マウス群の直腸筋層でその発現がコントロール群と比較すると低下しており、先天的に腸管の運動能が低下している可能性が示唆された。これらの結果から、胎仔治療が直腸肛門奇形においても重要であると考えられる。
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