研究概要 |
直腸肛門奇形は新生児外科疾患の中で最も多い疾患の一つであるが、その病態の解明には至っていない。昨年度、我々は妊娠9日目のマウスにビタミンAの誘導体であるエトレチナートを過剰投与することにより直腸肛門奇形マウス胎仔を作製し、そのモデルを用いて、神経伝達分子であるSubstance PやVasoactive intestinal peptideおよびc-kitに注目し、その抗体を用いて免疫組織化学的染色を行った。その発生過程,とりわけ妊娠後期において、直腸肛門奇形マウスではコントロール群と比較して明らかにそれらの活性が低下していることがわかり、胎仔治療の重要性が示唆された。今年度はこれらの成果を、小児外科の国際学会の一つであるPacific Association of Pediatric Surgeonsにおいて発表し、現在論文を投稿中である。また、昨年度併せて実施した細胞移動に関わるWnt-5a、Rhoキナーゼおよびc-jun N-terminalkinaseに関しても、エトレチナート投与早期において、総排泄腔膜におけるそれらに対する抗体の発現を免疫組織化学的染色を用いて検索したが、正常群と比較して直腸肛門奇形群ではそれらの発現の低下が認められた。この結果から、直腸肛門奇形群では特に中胚葉系の細胞移動が抑制されていることが示唆された。この成果に関して、現在、論文作成中である。さらに、今年度は培養技術を用いて、正常マウス胎仔の直腸肛門部の培養を試みたが、細胞死が多く認められ、培養液の組成のさらなる工夫が必要であり今後の課題である。
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