平成21年度に作成した腸閉鎖後の短腸症候群(SBS)ラットモデルを用いて、平成22年度では、1生月でSTEP法に準じた腸管延長術を行うモデル作成を行なった。7例のSTEP施行生存例を得、正常コントロール群およびSBS群と、このSTEPを行った群(STEP群)との間で、腸管壁内の神経分布、筋線維分布、ペースメーカー細胞の構造変化を検討した。実際には、免疫組織化学法を用いて、NSE、α-SMA、c-kitをマーカーとして比較検討を行った。 この検討では、STEP法による腸管延長を行って、2週間後の腸管と1生月のコントロールラットの空腸、SBSラットの間で比較検討した。STEP群では、コントロール群に比べて、神経節細胞の分布は軽度減少しており、さらに筋層への神経分布の著明な減少、筋層の高度の肥厚、ペースメーカー細胞の減少を認めた。これらの変化はSBSラットでも認められた所見であるが、その変化の程度はSBSラットの壁内変化に比べると軽度であった。そのため、STEP群では術後2週間ではコントロール群に比べ腸管壁内構造の変化は残っているが、腸閉鎖で認める壁内変化は改善傾向があるものと考えられた。また、これらの所見から腸閉鎖後の短腸症候群となった例に対して、STEP法を行った場合は、STEP法の時期が早期に行われれば、延長された腸管では壁内構造の変化が残存しており、まだ蠕動運動が障害されている可能性が示唆された。 これらに基づき、術後4週目と術後2ヶ月目のSTEP群生存例での壁内変化の確認を行い、SBS群、コントロール群および2週目の群との比較を行い、これらをまとめて発表する予定である。
|