Tissue engineering chamber(以下、TEC)を再生の場として、vascular carrierに動脈血管束を用い、細胞(in vivo)と細胞外マトリックス(人工真皮:type I collagen sponge)、細胞増殖因子(FGF-2)、骨髄液由来多血小板血漿(bm-PRP)を併用して、独自の栄養血管を有した軟組織を再生し、血管柄付き皮弁を作製する方法を検討した。研究の遂行初期に、ウサギ腸骨から採取した骨髄液の量と濃度にバラツキがあることが判明した。このため、骨髄からのPRPの代わりに末梢血からPRPを作成して実験に用いた。多血小板血漿(PRP)は、抗凝固剤クエン酸デキストロース(ACD)4mlを入れた40mlシリンジを準備して、大腿動脈から26mlの自家採血を行い、これを遠心分離機にかけPRPを3ml作製した。PRPの活性化は、自家血清と10%塩化カルシウムを3:1の割合で混じたものを自家トロンビンとして用い、PRPに対して自家トロンビン液を10:1の割合で添加して行った。コントロール群、FGF群、非活性化PRP群、活性化PRP群、非活性化PRP+FGF群、活性化PRP+FGFの6群に分けて再生組織の量、器質化の成熟度、血管新生について検討した。結果:血管付軟組織再生には活性化PRPと非活性化PRPでは、後者が優れていた。最も大きな成熟性の高い再生組織が得られたのは非活性化PRP+FGF群であった。非活性化PRP群では、好酸球が多く見られたのに対して、活性化PRP群では好酸球の反応は見られなかった。このことは、人工真皮とPRPを併用した場合には、人工真皮との接触で血小板からα顆粒が徐放され、これが人工真皮の器質化に有用であったと考えられた。今回とこれまでの研究結果から、TECを用いた血管柄付き軟組織再生では、細胞増殖因子としてPRPが最も有用で、人工真皮と組み合わせた場合には非活性化PRPとFGFを併用する事が臨床応用に要求される確実性と安全性を担保することが判明した。
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