実験動物としてはSprague-Dawley ratのオスを用いた。ラットをネンブタールの腹腔内注入により麻酔し、腹臥位にて固定。顔面の下顎縁に皮膚切開を加え、顔面神経の頬骨枝と頬枝を剥離露出した。耳介下方から口角にかけての皮切を行い、顔面神経頬骨枝と頬枝を露出した。ラットの顔面神経頬骨枝を一側は1カ所、対側は2カ所切断後ただちに10-0ナイロンにて顕微鏡下に再縫合し、再縫合部の遠位に頬枝を用いた流入型端側神経縫合を行った。1ヶ月後に頬枝を切離してdonor releaseを行い、その後さらに2.5ヶ月後に神経標本を採取した。採取した神経を中央で切断して、末梢側と中枢側に分け、エポン包埋を経てトルイジンブルー染色を行った。作成したプレパラートの顕微鏡画像をデジタル化して、画像解析ソフトで有樋神経の数と短径を計測した。(結果)1ヵ所再縫合ではどの検体においても、distalでproximalより神経軸索数が少なくなっていた。2ヵ所再縫合ではどの検体においては逆に、distalでproximalより神経軸索数が多くなっていた。recipientの神経損傷程度が大きい場合には、donor releaseを伴う流入型神経端側縫合を行う事でrecipientの神経再生軸索が増加し、一方、それほど神経障害の程度が大きくない場合は、同じ操作が逆に神経再生軸数の減少を引き起こす可能性が示唆された。一方、神経軸索短径の比較では、1ヵ所再縫合と2ヵ所再縫合で有意差を認めなかった。(考察)神経軸索数が1ヵ所縫合では減少し、2ヵ所縫合では増加している現象を同時に説明できる仮説としては次のようなことが考えられる。すなわち、端側縫合により神経上膜の中に再生した軸索はそのまま生着するのではなく、何%かは機能不全に陥り、すると1ヵ所縫合では、多少減少することになり、一方2ヵ所縫合では多数の軸索が端側縫合から流入してくるため、その一部が機能不全に陥ってもrecipientnerve側の再生軸索がすくないため結果として再生軸索数は増加する。
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