褥瘡、糖尿病性潰瘍、虚血性潰瘍など難治性の慢性皮膚潰瘍では、肉芽創面での上皮化が遷延する。創傷治癒過程における表皮角化細胞の増殖と分化による上皮化は、生体内では肉芽創面に存在する線維芽細胞との細胞間相互作用により大きくレギュレートされていると考えられる。本研究では皮膚三次元培養組織による創傷治癒モデルを用い、細胞増殖因子の発現・反応の違いに焦点を当て、正常皮膚と慢性潰瘍部における再上皮化の相違を検討することを目的としている。平成21年度は、1. 正常線維芽細胞による創傷治癒モデルの作製2. 慢性潰瘍から採取した線維芽細胞による創傷治癒モデルの作製3. 上記1.2.基本モデルの組織検討を目標とした。正常線維芽細胞による創傷治癒モデルでは、幅4mmに表皮欠損部を作製したところ、約3日で1-2層の未分化な表皮層が再生した後、重層化・分化をし、約7日で欠損部作製前と同様の重層化した扁平上皮層が再生された。免疫染色により、基底層・基底上層・顆粒層・角化層に特有の分化マーカーの発現を確認した。慢性潰瘍部から採取した線維芽細胞では、細胞自体の増殖能が乏しく、至適な培養継代数、細胞播種数に検討を要している。基本となる皮膚三次元培養組織では、線維芽細胞+コラーゲンマトリックスにより作製する真皮層の収縮・形成が正常線維芽細胞に比べて劣る。またコントロールとするため、同様に線維芽細胞+コラーゲンマトリックスの代わりに、無細胞真皮を用いたモデルを同様に作製しており、今後組織を検討する段階である。
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