研究概要 |
本研究課題においては、平成22年度までに、主にラット近位尿細管細胞を用いて、 1.炎症性mediatorにより細胞死が起こり、そのメカニズムにナポトーシス機構が関与している. 2.NOS依存性及び非依存性の細胞死が関与している. 3.その細胞死の抑制には、糖質グルココルチコイド、melatonin、アンギオテンシン受容体阻害薬等、抗炎症性作用薬が有効な一方、NADPH oxidase阻害薬、catechin,dimethyl sulfoxide(DMSO)等、抗酸化作用薬も有効. 4.等の知見を得ていた。 当該年度においては、ヒト肺胞上皮細胸を用いて、同様の検討を行い、 1.本細胞系では炎症性刺激によってもiNOSの上昇は軽度であり、細胞種によって惹起される細胞傷害性シグナルが顕著に異なる. 2.炎症性mediatorにより細胞死が生じ、アポトーシス機構の活性化も確認したが、アポトーシスの抑制のみでは細胞死の抑制効果は限定的であり、それ以外の細胞死機構の関与も重要である. 3.炎症性mediatorにより全てのMAP kinaseが活性化し、その中でJNKの活性化が細胞死に一部関与している. 4細胞死を軽減する薬剤として、糖質グルチコイド、アンギオテンシン受容体阻害薬、DMSO以外に、免疫抑制薬、mitoKATP channel開口薬、cyclic AMP,ω3脂肪酸等が同定できた. 等の知見を得た。 以上、炎症性細胞傷害の分子機構に関して新しい知見を得る一方、抗炎症・抗酸化薬を治療に応用する際の分子基盤を提示するなど、意義深い成果を得た。
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